© The Japan Muscular Dystrophy Association. 発売されると脊髄性筋萎縮症(SMA)で初の経口治療薬(液体)で在宅での治療も可能となるリスジプラムをめぐり、開発を手掛ける製薬会社、中外製薬(ロシュ)は10月15日、厚生労働省に製造販売承認申請をしたとニュースリリースで公表しました。リスジプラムはすでに2019年3月、厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定されており、迅速な審査、販売承認が期待されます。, SMAをめぐっては、スピンラザ(バイオジェン社、核酸医薬)、ゾルゲンスマ(ノバルティス社、遺伝子治療薬)の2つの治療薬がすでに日本で発売されており、低分子化合物であるリスジプラムは、SMA第3の治療手段となります。アメリカのFDA(食品医薬品局)は、2020年8月7日にリスジプラムを承認しています。, SMAについては、このほかにも4番目となる治療薬候補として、ゾルゲンスマを販売するノバルティス社がリスジプラムと同じ低分子化合物の経口薬を開発中です。現在、ヨーロッパだけで治験が進められています。, 筋ジストロフィーで日本初の治療薬ビルトラルセン(ビルテプソ)は、申請から承認までの期間がわずか6カ月でした。リスジプラムについても同様な迅速な承認手続きが待たれます。, (ニュースリリース)リスジプラム、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初の経口薬として国内で製造販売承認申請(外部のサイトを開きます), 中外製薬(ロシュグループ)は、1月31日に開催した2019年12月期決算説明会で、現在開発中の脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬、リスジプラムの申請時期を2020年予定……, 〒170-0005 東京都豊島区南大塚3-43-11 福祉財団ビル (2019年6月3日にFacebookに書いた投稿の編集再掲です) 2億円の新薬が子供の難病に劇的に効く、ということで話題になったゾルゲンスマですが、大事な点が日本ではあまり言われていないように見受けます。 【再掲時の追記:ゾルゲンスマは脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬です。

~ 2019年1月出産 & 育児奮闘記 ~, やっと、ゾルゲンスマ投与できたので、ここで一度、今までの治療、スピンラザの効果についてまとめておこうと思います。, スピンラザを受ける頃、やっぱり、どの程度の効果があるのかを知りたいと思うのはごく当たり前なことなのに、「(他の子が)実際に受けてどういう変化があったか, 数例はネットにもあがっていますが、2017年に承認されてから3年経ってるんだからもっとあっていいはずなのに…, SMAだと分かった時は、先が見えないことに不安になるし、だからこそ余計に、他の子の例を見て、ある程度、心の用意をしたい。, そう思ったのに、実例情報がなさ過ぎてハラハラしながら過ごしてきたので、他の方が今後、同じ思いをしなくていいように、ほんの少しですが、娘の場合のスピンラザ効果を書いておこうと思います。, とはいえ、娘と同じくらいの年齢で分かったら、今はもうゾルゲンスマを受けられるので参考にはならないかもしれないんだけど…, この投与後の変化は、純粋にスピンラザだけというより、発達とリハビリもあってこその効果だと思います。, 今後は、ゾルゲンスマがどの程度効果を発揮してくれるのか、焦る気持ちを押さえて、気長に娘と病気に向き合っていきます. 20:40 就寝7:15 起床やっと、ゾルゲンスマ投与できたので、ここで一度、今までの治療、スピンラザの効果についてまとめておこうと思います。スピンラザを受け… ゾルゲンスマの効果とは? ゾルゲンスマの治療効果は、2017年11月2日付のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で報告されています。. 脊髄性筋委縮症(sma)の治療薬には2017年に承認されたスピンラザ髄注(一般名:ヌシネルセン)しかなく、髄注かつ4~6か月毎の投与が一生涯必要でした。.

国内最高額となる1億6707万7222円の薬が保険適用された。脊髄性筋萎縮症(SMA)という難病の治療薬「ゾルゲンスマ」だ。保険適用により花粉症や風邪で受診するときのように健康保険を使えことになったわけだが、実際に治療した場合には3割負担の人で約5000万円を支払わねばならないのだろうか……。, ゾルゲンスマは「脊髄性筋萎縮症(SMA)」という希少疾患の治療に用いる。SMAは特定の遺伝子が原因となって起こる疾患で、乳児期から小児期に発症するSMAの罹患率は10万人あたり1~2人と言われている。, これまでは治療薬がなく、症状を緩和したり、生活の質を保つ治療が行われていたが、2017年に待望の世界初となるSMAの治療薬スピンラザが誕生した。気になる薬価は1バイアルあたり949万3024円だ。, 次いで今年5月にゾルゲンスマが誕生した。薬価は先述の通り1億6707万7222円だ。同じSMA治療薬でも価格に大きな差があるが、いったいどのようにして薬価が決まったのだろうだろうか。, 先ほどから何度か登場している「薬価」とは病院で処方される医療用医薬品の価格のこと。厚生労働省が薬の効果などを考慮して決める。, 新しく開発されて発売することになった薬の価格は類似薬の有無によって算定の仕方が異なる。類似薬に比べて高い有効性や新規性が認められると価格が上乗せされる。, ゾルゲンスマの場合は2017年に承認されたスピンラザを比較薬として「類似薬効比較方式(Ⅰ)」という方法によって薬価が算定された。高額になったのは、ゾルゲンスマは1回の投与で高い治療効果が得られることが評価されたためである。, 中央社会保険医療協議会の資料「再生医療等製品の保険償還価格の算定について」によると、比較薬のスピンラザは「導入時に頻回の負荷投与を行い、さらに4ヵ月に1回繰り返し髄腔内注射を行う必要がある」。一方のゾルゲンスマは1回の静脈内注射で治療が完結することから、比較薬のスピンラザの11倍の薬剤費(949万3024円×11=1億442万3264円)が薬価のベースとなった。, これに加え、ゾルゲンスマは「正常な遺伝子を細胞に直接的に導入するという原理的には根治の可能性もある」ことや「1回の静脈内注射で投与が完結して患者負担が軽減される」ことなどが評価され、50%の有用性加算が上乗せされた。さらに先駆け審査指定制度加算10%が加わった結果、1億6707万7222円というわが国で最高となる薬価が算定されたのである。, 3割負担の場合、自己負担額5000万円を支払えなかったら、治療をあきらめないとならないのだろうか。, 結論からいうと、ほぼ自己負担なしで治療を受けられる。SMAは小児慢性特定疾病や指定難病に指定されており、これらの制度によってさまざまな公的支援を受けることができるためだ。, 小児慢性特定疾患や難病の医療費助成を受けた場合の自己負担の割合は2割で、かつ世帯の所得に応じた自己負担上限額(月額)が定められている。政府広報オンラインの「難病と小児慢性特定疾病にかかる医療費助成のご案内」を見てみると、たとえば年収が約430万円~850万円の夫婦2人と子供1人の世帯の方が小児慢性特定疾患の医療費助成を受けた場合の自己負担額の上限は1万円となっている(重症の場合は5000円)。医療費助成制度を活用すれば、高額な医療費のために治療をあきらめなければならないという事態に陥ることはなさそうだ。, ここまで小児慢性特定疾患や難病の方が活用できる医療費助成の制度について紹介したが、こうした疾患以外、例えば長期にわたるがんの治療などで医療費の自己負担が高額になり困った場合に利用できる制度もある。, それが、高額療養費制度だ。公的医療保険における制度の1つで、健康保険加入者(国民健康保険・健康保険組合・全国健康保険協会等)は、同一月内における病院や薬局での自己負担が一定の金額を超えた場合、自己負担限度額(年齢や所得などによって定められている)を超えた分の払い戻しを受けることができるというもの。 69歳以下で一般的な収入の人(会社員で、年収約370万円~770万円程度)なら、医療費が100万円かかった場合、窓口負担が3割負担である人の上限の目安はひと月で8万円強だ。, 気をつけたいのは、自己申請する必要があること。健康保険に加入していても、自動的に適用されるわけではないので注意したい。また、申請を忘れていた場合は、診療を受けた月の翌月の初日から2年以内であれば、遡って申請することができる。気になる人は、医療機関の医療相談窓口や医療ソーシャルワーカーなどに相談してみると良いかもしれない。, 毎週100人ほどの患者と対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている薬剤師ライター。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。, 本サイトに掲載されているすべての文章・画像の著作権は講談社に帰属します。他サイトや他媒体への無断転載・複製行為は固く禁止します。. SMAをめぐっては、スピンラザ(バイオジェン社、核酸医薬)、ゾルゲンスマ(ノバルティス社、遺伝子治療薬)の2つの治療薬がすでに日本で発売されており、低分子化合物であるリスジプラムは、SMA第3の治療手段となります。 『smaアートオリンピック2020』の一般人気投票は10月26日(月)14:00をもって終了致しました。 ご投票いただきましたみなさま、ありがとうございました。 ゾルゲンスマの場合は2017年に承認されたスピンラザを比較薬として「類似薬効比較方式(Ⅰ)」という方法によって薬価が算定された。 高額になったのは、ゾルゲンスマは1回の投与で高い治療効果が得られることが評価されたためである。 この時点でゾルゲンスマの話を聞いていたので、希望を託して承認を待つことにしました。 そして、ゾルゲンスマを6月11日に生後7ヶ月で投与。現在、投与して約1ヶ月が経過しました。 (ゾルゲンスマ投与前にスピンラザ4回投与済み) Copyright © CyberAgent, Inc. All Rights Reserved. 2019年1月に愛しい娘を出産しました。できる限り手抜き家事をしたい私と、娘との日常を綴った日記です。難病を抱えた娘がどんなふうに育っていくのか、私達が向かう先に何があるのか、未知の道を歩んでます! Googleマップ. この時点でゾルゲンスマの話を聞いていたので、希望を託して承認を待つことにしました。 そして、ゾルゲンスマを6月11日に生後7ヶ月で投与。現在、投与して約1ヶ月が経過しました。 (ゾルゲンスマ投与前にスピンラザ4回投与済み) リスジプラム、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初の経口薬として国内で製造販売承認申請. 難病治療薬の「ゾルゲンスマ」が保険適用となり、1回あたりの価格が国内最高額の1億6700万円になることがわかりました。, アメリカでは、1回あたり2億円以上で、「世界で最も高い薬」といわれています。ここでは、ゾルゲンスマの保険適用について中島先生に詳しくお伺いしました。, ゾルゲンスマは、主に幼い子どもの全身の筋力が低下する脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう/SMA)の治療薬で、2020年3月に承認を受けました。神経と筋肉の機能を高めることで筋肉の萎縮を防ぎ、予後と運動機能を改善することが期待できます。ただし、ゾルゲンスマの効果には個人差があります。, 中央社会保険医療協議会は、ゾルゲンスマを保険適用の対象とし、薬価を1回あたり1億6700万円にすることを承認しました。これまでは、白血病などの治療薬「キムリア」が3349万円と国内最高額でしたが、それを大きく超える金額になっています。, 薬価は、類似薬がある場合は「類似薬効比較方式」、類似訳がない場合は「原価計算方式」で決定します。ゾルゲンスマはスピンラザの類似薬のため、類似薬効比較方式で算定されました。類似薬の薬価に対し、有用性や画期性、小児加算などを考慮した加算を行います。そのほか、複数国における価格の平均額を踏まえた調整を行うなど、さまざまなルールがあります。, ゾルゲンスマは、1回あたり1億6700万円とのことですが、これでは治療を受けたくても受けられないのではないでしょうか。, 確かに、1回の治療に1億6700万円もの医療費を支払える人は限られています。しかし、日本には公的医療保険の「高額療養費制度」があるため、実際の負担額は低く抑えられます。さらに、骨髄性筋委縮症は小児慢性疾患医療費助成制度の対象です。それに加え、自治体が子どもの医療費を助成しているため、自己負担額はほとんど発生しないでしょう。, 今回、中島先生がおっしゃられたように、ゾルゲンスマの治療費の自己負担額は少なくて済むため、対象となれば問題なく治療を受けることが可能です。難病の骨髄性筋萎縮症は、これまで根本的な治療法が見つかっていません。ゾルゲンスマによって、1人でも多くの患者の命が救われることを願うばかりです。, 金沢医科大学医学部卒業後、同大学病院にて小児科・内科として研修を積む。その後は複数の病院で内科医や皮膚科医として勤務。2018年より福岡市中央区に「国を超えた新しい形の医療を提供」をコンセプトに、クリスタル医科歯科クリニックを歯科医師である夫と開院。, 本サイトでは正確かつ最新の情報を提供できるよう最善を尽くしておりますが、掲載された情報に基づく判断については、利用者の責任のもとに行うこととし、本サイトのご利用により万一何らかの損害が発生したとしても、一切責任を負いかねますのでご了承ください。. 2億円の新薬が子供の難病に劇的に効く、ということで話題になったゾルゲンスマですが、大事な点が日本ではあまり言われていないように見受けます。, 【再掲時の追記:ゾルゲンスマは脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬です。SMAの中にもいろいろ細かい種類があるのですが、ここでは主に、乳幼児期に筋力低下をあらわし、急激に進行して生後数年以内に人工呼吸器がなければ自力で息も吸えなくなるというタイプを想定しています。もともと治療らしい治療はなかったのですが、最近スピンラザという薬が劇的に効くとして話題になりました。そのスピンラザに匹敵するか上回るのでは、と高い期待を背負って登場したのがゾルゲンスマです。SMAの原因に関わるとされるSMN1遺伝子の検査によって、ゾルゲンスマが効きそうかどうかを見分けることになっています】, ゾルゲンスマについては共同の記事がいくつかの媒体から配信されているので、ご覧になった方もいるかと思います。https://this.kiji.is/504807819868079201, ロイターの記事も似た内容です。https://jp.reuters.com/article/novartis-genetherapy-idJPKCN1SX091, ですが、ロイターの本家米国版にはもっと長い記事があるんですね。https://www.reuters.com/article/us-novartis-genetherapy/novartis-2-million-gene-therapy-for-rare-disorder-is-worlds-most-expensive-drug-idUSKCN1SU1ZP, こちらの記事は、最後1/3ぐらいでわざわざ小見出しを立てて、スクリーニングの話をしています。難病によく効く薬が出たんだから使えそうな人をスクリーニングしよう。一見当然の発想です。ですが、この点こそがゾルゲンスマの通過するべき最大の課題であり、それに比べれば値段はささいなことだと思います。, 一般に高額薬は、アメリカの状況にあっては、「高くて使えない」という格差を拡大する恐れがあります。「安くしろ」という声が強くなるのもうなずけます。, 日本では高額療養費制度があるので、「高くて使えない」という人は相対的に少ないと思われます。オプジーボのときも論点はそこではなく、「悪性黒色腫に使うだけなら影響は限定的だったが、肺がんとなると人数が多いので保険財政に負担がかかる」という議論がなされていました。この観点からはオプジーボより高いキムリアもスピンラザも、もちろんゾルゲンスマも、影響は限定的と言えそうです。, またゾルゲンスマは子供に使う治療であり、もし効果が長期にわたって持続するなら、高くても費用対効果は悪くないかもしれません。, 感情的にも、子供の治療には高齢者の治療よりお金をかけてあげたいという人は多いんじゃないかと思います【追記:ただし、ぼくとしてはこの考えに単純には賛成できません。後ろのほうで説明しています】。, 以上を考え合わせて、ぼくはゾルゲンスマの値段は妥当であり、問題視しなくてよいと思っています。, ほかにも細かく言うと副作用のリスクとか長期的な利益がまだ特定できないとか不適切使用の可能性とか誤った期待の可能性とか言いたいことはいろいろありますが、それらすべてを足したよりスクリーニングのほうが深刻だと思うので、以下はスクリーニングの話に絞ります。, 【追記:スクリーニングというのは、ここではすべての新生児を対象に遺伝子検査をすることを指しています】, スクリーニングはどうも、ゾルゲンスマの開発の段階から想定に入っていたのではないかと思います。, 添付文書によると、phase 3の試験は続行中で、中間報告が出ています。https://www.fda.gov/media/126109/downloadこの試験です。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03306277添付文書によれば、ゾルゲンスマによる治療前の参加者21人は全員が人工呼吸器なしで呼吸し、経口摂取のみで栄養がとれていたとのことです。, 【追記:ゾルゲンスマの開発過程で研究不正があったとのことで調査が行われた結果、たしかに不正はあったが結論を変えるものではなく、最終的な臨床試験には不正はなかったという話になっています。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-06/PVU10CDWRGG301 】, SMA1型の自然史のとおりならば、支えなしで座位は不可能、人工呼吸器なしには平均6か月から9か月で死亡するとのことです。http://www.nanbyou.or.jp/entry/285ゾルゲンスマの治療後、データカットオフの時点までに試験離脱が1人、死亡が1人、残り19人は生存していて生後9.4か月から18.5か月でした。うち16人は毎日NIVを使う必要がない状態だったとあります。10人は支えなしで座位ができました。劇的な効果だと思います。, この試験は適格基準に症状についての記載がありません。ロイターの記事では、関係各位が一致して「症状が現れるより前」の治療に期待を寄せていますので、そのとおりにデザインしたのかなと思います。どうやって対象者を集めたのかはわかりませんが、多くの人にSMN1遺伝子のスクリーニングをすることは必須だったようです。したがって、ロイターの記事がスクリーニングに言及しているのは当然のことです。, では、それは正しいことでしょうか。つまり、ゾルゲンスマに期待して、すべての新生児がSMN1遺伝子のスクリーニングをするべきでしょうか?, 遺伝子検査は安くはないですしSMAはレアですから費用対効果は悪いでしょう。なので公共的なスクリーニング事業として簡単には始まらないかもしれませんが、個人に対して主治医が「こういうのがありますけど興味ありますか?」と言うのは止められません。そして大規模なスクリーニングをやると、例によって偽陽性(SMAだと思ってゾルゲンスマやったけど誤診だった)などの問題が現れます。それでもスクリーニングというのはエスカレートするものなので、「出生前診断でやろう」となるのも時間の問題です。すると日本ではやらないはずの「胎児適応による中絶」が次の論点になるはずです。, 胎児適応による中絶はあまりニュースになりませんが、現代医学の抱える困難を代表するきわめて深刻で差し迫った問題だと思います。つまり、「現代医学は優生思想から脱出できるのか」という問いに重なっていると思うのです。, 2017年のJAMAにこんなエッセイが載ってました。https://jamanetwork.com/journ…/jama/article-abstract/2605803著者の女性医師は、自身にBRCAの変異があったので、着床前遺伝子診断を使って、変異がない子供を授かりました。そしてこんな気持ちになったと書いてあります。, “私は息子を見る。彼がBRCA陰性であること、彼の娘、息子、孫たちも同様であることを知っている(彼が独立した陽性のキャリアと結婚しない限り)。変異は私の家族から根絶されたのだ。”, これをあたかも「ちょっといい話」のように載せてしまうのがJAMAの感性であり、アメリカの医師の感性です。つまり、現代医学は優生思想からぜんぜん脱出できてません。旧優生保護法による強制不妊手術が話題になる昨今ですが、「悪い遺伝子は根絶してしまおう」という発想そのものは決して昔のものではないのです。, ゾルゲンスマがあるから治せばいいんじゃないか、というのは性善説です。たしかに薬の良い面だけを引き出せればみんなハッピーになるかもしれません。しかし、ゾルゲンスマを理由に出生前診断がルーチンになれば、ついでにほかの検査もやりたくなるに決まっています。遺伝子パネル検査がいかにもいいことのように受け止められている世の中ですから(出生前診断を警戒するのと同じ理由で、ぼくは遺伝子パネル検査もやらないほうがいいと思っていますが、それは別の話です)。SMAの「ついでに」ほかの単一遺伝子病をごっそり検査して選択的に中絶するという誘惑に対抗できる論理を、私たちは持っているでしょうか。そして、それを許したときに、次にはいま生きている単一遺伝子病の患者さんに強制不妊手術を誰もしないと保証できるでしょうか。「強制」しなかったとしても、本人が「世の中に迷惑をかけるから…」と言い出したら、どうでしょうか。, 誤解されたくないのですが、ぼくはゾルゲンスマが出てきたことを喜んでいます。素晴らしい薬だと思います。出生前診断や強制不妊手術をゾルゲンスマのせいにするつもりもありません。, 悪いのはスクリーニングです。「いい薬があるから、使える患者を探そう」という発想では、薬が主役になっています。それはたやすく患者が人間であることを忘れさせます(同じ理由で、ぼくはいわゆるプレシジョン・メディシンは眉唾ものだと思っています)。, だから、ゾルゲンスマに課せられたテーマは「どうやってスクリーニングを断ち切るか」だと思います。スクリーニングの問題に比べれば、値段は取るに足りないことだと思います。, というか、ゾルゲンスマというすばらしい薬を守るために、ひとりたったの2億円というリーズナブルな価格を理由に足を引っ張ろうとする人を黙らせなければいけません。, 高額薬対策としてもっか先行しているのは、NICEのような費用対効果方式だと思います。だからこそ日本でも導入されているのだと思います。しかし、費用対効果を評価することを「できるだけ医療費を抑えたい」という枠組みでとらえてしまうと、事の順序がおかしくなってしまうと思います。なぜ医療費を抑えたいのか? 国の財政が破綻して債務不履行になるかもしれないから。では財政改善に結びつくように重み付けをしよう。治すと働ける人には積極的にお金を使い、働ける見込みのない人や高齢者はほどほどにしよう。そういう方向に進んでしまうと、次には「日本人の平均年収より高い薬があっていいのか」という議論が出てきてしまいます。それは本末転倒だと思うのです。, 医療資源は有限です。だから効率的に使いたい。そこまではいいのですが、何を優先するかは思想の問題です。普遍的客観的な「効率」の指標があると思ってしまったらもう、「働ける人優先」まではすぐそこです。, 医学は困っている人のためにあると思います。「私たちは困っている人のために働いて医療費を稼いでいる」と言ってもいい。だとすれば、働ける可能性がない人にこそ最優先で資源を投入しなければいけないはずです。そう考えると、費用対効果を計算して節約するべきエリアはまったく違って見えてくると思います。, つまり、人の命や健康に関わる《どんな》問題なら、私たちは「お金をかけるぐらいなら、ほっとこう」と思えるのか。そういう文化の問題をこそ問わなければならないと思うのです。, https://jp.reuters.com/article/novartis-genetherapy-idJPKCN1SX091, https://www.reuters.com/article/us-novartis-genetherapy/novartis-2-million-gene-therapy-for-rare-disorder-is-worlds-most-expensive-drug-idUSKCN1SU1ZP, https://www.fda.gov/media/126109/download, https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03306277, https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-06/PVU10CDWRGG301, https://jamanetwork.com/journ…/jama/article-abstract/2605803.